ヨーロッパから上陸した新しいフィギュアキットがダーク・プレイス・ミニチュアです。
日本とは一味違うヨーロッパの歴史トッ伝統から生まれたクリーチャー、キャラクターたちを超絶なディテール表現で再現します。
悪魔が支配する独特な世界観を各フィギュアの造形から感じていただけることでしょう。
腐海の女王:ヴォラトリックスの物語
ヴォラトリックスは、魔界の大海を起源に持つ女王である。
魔界最古のデーモン・ロード二人のうちの一角であり、空の支配者、汚れた大翼サイシスと対を為す由緒正しき魔王こそ彼女、ヴォラトリックスなのである。
彼女は母性と姦淫の象徴だった。
彼女は敬虔な快楽主義の体現者で、底なしの慈愛と完璧に欠如した自制心を兼ね備える、悍ましくも美しい女王であった。
その意味でも、冷酷な理知を友とするサイシスとは対称的な存在だったと言えるだろう。
彼女の支配地は、深淵の広くを占める大海だ。
鉛色をした海域の硫黄臭が立ち込める海溝の奥深くに彼女は住処を構えていた。
快適な王座の上で、彼女は食っちゃ寝しながら日々をだらだら過ごしていた。
怠惰な女王ヴォラトリックス、そんな彼女が唯一熱心に取り組むのが自らの快楽に関わる行為であった。
外からの客人があると彼女はいそいそと出迎えの準備に取り掛かる。
そして客人を強引に誘惑すると、人が恋人と抱擁を交わすように優しく相手を抱き寄せてから、頭足の中央にある股間へとその存在を受け入れるのだ。
そこには鋭利な歯がずらりと並んでいて、犠牲者の肉と骨を削りとり、美味なひき肉へと変えてしまう。
彼女はそれを突き抜ける快楽とともに体内へ受け入れると、腹の中でこねくり回し最後には新たな子として産み落とすのだ。
それが彼女が楽しみとする一連の営みだった。
このようにして彼女は眷属を増やしていった。
そうして生まれた彼女の息子や娘達には、Consuming One、”魅了するもの”と言う総称が与えられた。
その名が示唆するように、彼女の子等は皆とても美しかった。
ヴォラトリックスに捕り殺された犠牲者の基準に照らして、極めて優れた容姿を有していた。
と同時に、その子等は母親譲りの欲望をその美しい皮の下に宿してもいたのであった。
そんな彼らは、長じて母親の元を巣立っていくと、犠牲者達が帰属していた集団に潜り込み内部から人と組織を食い尽くした。
彼らは実に恐ろしい存在だった。
将軍の暴勇も宰相の狡知も強烈な魅了の前にはなんの意味も持たない。
犯したい。あるいは犯されたい、そう望んだもの達は、次々と寝所や暗がりや茂みの中で、彼女の子らに食われていった。
彼女とその子供達は捕食する対象を選ばなかった。
彼らは博愛主義者なのだ。
ゆえに自らを強者とたのむ愚か者も、己の卑小さを知り嘆き暮らす賢者達も、皆等しく彼女らの恋人であり餌となった。
ヴォラトリックスの眷属は母譲りの寛容さで、それらを受け入れ消化した。
そして彼女と子供達は、急速にその支配域を広げたのだ。
その領域拡張は、直接的な闘争よりもずっと効率的ですばやかった。
ヴォラトリックスと眷属達は、一つ一つが個であったが、同時に意識と感覚を共有する「全」としての性質も有していた。
ヴォラトリックスは、自らが産み落とした存在の感覚を、任意に自らのものとすることができたのだ。
ゆえに彼女は遠隔から子供達経由で楽しみを得る機会にも恵まれていた。
ヴォラトリックスは悪食だった。
強いものも弱いものも、美しいものも醜いものも、彼女は分け隔てなく愛していて、区別することなく取り込んだ。
その営みの果てにあるものは何だろうか。
彼女のことを知るほんの一握りのもの達は、ヴォラトリックスの究極的な目標は、全世界の支配であると噂した。
遠い未来、ヴォラトリックスが世界の全てを飲み込む日が来れば、この世の全てがヴォラトリックスの一部として再定義される事になる。
そうなれば、この愛すべき深淵は、碌でもない楽園へと生まれ変わる事になるはずだった。
ヴォラトリックスの真意はわからない。
十中八九、大した考えなど持っていない。
彼女は刹那的快楽主義の体現者だ。細々とした理屈には何の興味も持たないだろう。
彼女はしたいことをして、日々を楽しく過ごしているだけなのだ。
今日も今日とてヴォラトリックスは、快適な住処の中で、非生産的な生産活動に勤しんでいるに違いなかった。
ダーク・プレイス・ミニチュア グレイター エンタティ 腐海の女王 ヴォラトリックス 16,800円(税別)
全国の模型店、家電量販店模型売場、オンラインショップなどで2022年3月発売予定。
ホビコレでもご購入可能です