ヨーロッパから上陸した新しいフィギュアキットがダーク・プレイス・ミニチュアです。
日本とは一味違うヨーロッパの歴史トッ伝統から生まれたクリーチャー、キャラクターたちを超絶なディテール表現で再現します。
悪魔が支配する独特な世界観を各フィギュアの造形から感じていただけることでしょう。
膿疱の王:ヤーシンの物語
それは定形を持たない悪魔だった。
それは自身の形態に囚われたりもしない。
このヤーシン(Yersin)と呼ばれる存在と、他の大悪魔達との決定的な違いがそれだ。
成長の途上の肉塊。
あるいは無限に増殖する幹細胞の集合体。
性分化の手前でひたすらに肥大化を続ける胎児のごとき存在がこのヤーシンである。
それは明確な性すら持ち合わせていなかった。
ヤーシンは彼であり、彼女である。
ねじれた筋繊維と、夥しい浮腫と無数の生器官を生み出し続ける子宮によって構成される膨張する肉塊こそがヤーシンである。
ヤーシンの生殖は単体で完結する。
両性を具有するヤーシンは体内にある無数の生殖器を用いてシロアリの女王のごとき勢いで、蠢く膿疱を産み落とす。
それらはヤーシンの分け身であり子供達だ。体外へと排出されたそれは、這いずり、跳ね回り、辺りにある目につくものを手当たり次第に捕食した。
ヤーシンは慈母のごとき優しさで我が子達を見守った。
そして、生きるに足ると見込んだもの達は送り出し、そうでないもの達は優しく口に含むと食い殺した。
ヤーシンは合理的な生き物だ。
その合理性にもとづいて、無限の寿命を持つヤーシンは、生存が危ぶまれる弱い子らをもう一度自らの栄養へと還元した。
食べられるものはなんでも食べる。
それが、彼、あるいは彼女の長生きの秘訣であった。
ところで、本当にヤーシンは長生きなのか。
これには、一つの疑問があった。
ヤーシンの肉体は常に不規則に脈打っている。
そして頻繁に崩れたり、ちぎれ飛んだりを繰り返す。
ヤーシンの巨躯を構成する無数の肉塊は、それぞれが自我を有するかのごとく振るまうのだ。
常人には理解し難い、流動性と突発性。
それらは奔放で無秩序なものだった。
今でこそ魔王の意志に屈し、一つの個体を保っているがヤーシンがその意識を得てからずっと、そうであったという保証はどこにも存在しない。
これは、悪魔たちの間でまことしやかに囁かれる噂の一つである。
ヤーシンは一度以上、”崩壊”したことがあるかもしれない。
それは想像するだに恐ろしい事態であった。
ヤーシンの肉塊はそれ単体が非常に強力な個体であった。
一握りほどの肉塊でさえ、その強靭さと貪欲な捕食力で、数十倍の重量を持つ肉食獣を襲撃し消化吸収してしまう。
もしヤーシンが崩壊すれば、そんな肉塊が数千、あるいは数万もひとときに解き放たれることになる。
恐るべき膿疱の群れがなけなしの理性の制御を離れ、本能の赴くまま収奪と捕食を始めるのだ。
その暴威は、大規模な蝗害すら可愛く見えるほどの大災厄となるであろうこと想像に難くなかった。
しかも恐ろしいことに、地獄の住人達は、それと思しき災害の痕跡を目にする機会にも恵まれていた。
そここに転がる巨大な都市の遺構や強靭な骨格を持つ古代生物の残骸には全て食い荒らされたような傷跡が残っていた。
それらをほろぼした災厄はいったいなんであったのか。
ヤーシンがその元凶であると言う推測は、決して荒唐無稽なものではなかったのだ。
もし仮説が真実であるならば、ヤーシンとは未来の破滅を約束する存在だった。
這いずる不衛生なパンドラの箱。それは未だ健在で、今もぬくぬくと地獄の底で暮らしている。
実の所、彼は放置されているというわけではない。
地獄の未来を憂い、ヤーシンを滅さんと立ち上がった勇者達もかつては存在したのである。
しかし彼ら彼女らは、皆まとめて、ヤーシンの活動エネルギーへと変換されてしまったのだ。
ゆえにヤーシンは今日も元気に生きている。
ヤーシンを構成する肉塊は強力である。
それらを束ね支配するヤーシン本体が、それ以上に強力であるのは自明の理であるのだった。
膿疱の王ヤーシン、その身体は常に蠢き変化する。
体内と体外の器官が再配置される度、その神経系はズタズタに引き裂かれ、耐え難い激痛をヤーシンへと訴える。
ゆえに、ヤーシンは痛みの類に慣れていた。
結果、外部から与えられる痛みにも極め付けに鈍感になっていた。
ヤーシンの無数の開口部は、その多くが優しい微笑みの形を見せている。
あるいはもしかしたら、この悪魔は絶え間なく与えられる痛みからマゾヒスティックな喜びすら得ているのかもしれない。
恐るべき肉塊、飛び散る膿疱の発生源。
ヤーシンとはそんな悪魔である。
超絶表現のレジンキャストがその性格までを再現
ヨーロッパから上陸したダーク・プレイス・ミニチュアの世界。
其のキャラクターの一人、奉納の王 ヤーシンをレジンキャストで詳細に再現した組み立てキットです。
レジキャストならではの表現、技工が冴える渡るパーツからはヤーシンの精神までもを表現します。
ダーク・プレイス・ミニチュア グレイター エンタティ 膿疱の王 ヤーシン 16,800円(税別)
全国の模型店、家電量販店模型売場、オンラインショップなどで2022年3月発売予定。
ホビコレでもご購入可能です。